本作は、平和な町の海辺に現れた人喰いザメと、それに立ち向かう人々の姿を描いた海洋パニック映画です。
初公開されると大ヒットし、当時まだ28歳だったスティーヴン・スピルバーグ監督は、世界中にその名を知らしめることになりました。
本作は、1977年公開のスター・ウォーズに破られるまで、世界最高興行収入記録を保持するという映画史に残る成功を収め、続編3作と多くの模倣作品が作られました。
この記事では、作品情報・見どころを、なるべくネタバレ無しで語っていきます。
ジョーズ (字幕版)
作品情報
予告動画
概要
効果的な演出とBGM、リアルな映像で、人喰い鮫の恐怖がひしひしと伝わってきます。
町を恐怖のドン底に叩き落した人喰いザメを、人間たちが倒しに行くというシンプルなストーリーなのですが、一つの作品の中に、ホラー、パニック、アクション、海洋アドベンチャー、群像劇など、様々な要素が詰まっている奥深い作品でもあります。
本作の画期的なところは、実在する動物であるホオジロザメを、人喰いザメというモンスターに仕立て上げたことでしょう。
ゾンビなどの想像上のモンスターよりも、人を食べる実在の動物はより身近にある恐怖であり、本作の公開後には海水浴客が減少したとも言われています。
本作のヒットは、動物パニック映画という新たなジャンルを生み出すきっかけにもなりました。
スタッフ・キャスト
- 監督:スティーブン・スピルバーグ
- 製作:リチャード・D・ザナック、デビッド・ブラウン
- 原作:ピーター・ベンチリー
- 脚本:ピーター・ベンチリー、カール・ゴットリーブ
- 撮影:ビル・バトラー
- 編集:バーナ・フィールズ
- 音楽:ジョン・ウィリアムズ
- キャスト:ロイ・シャイダー、ロバート・ショウ、リチャード・ドレイファス、ロレイン・ゲイリー、マーレイ・ハミルトン
あらすじ
アメリカ東海岸にある、のどかな漁村・アミティ島。
ある日、ビーチパーティに参加していた若い女性が行方不明になり、翌日に死体の一部が打ち上げられます。
ニューヨーク市警から赴任してきた警察署長のマーティン・ブロディ(ロイ・シャイダー)は、サメによる被害を懸念してビーチを閉鎖しようとします。
島の観光業へのダメージを恐れたボーン市長(マーレイ・ハミルトン)ら町の有力者たちは、ビーチの閉鎖に反対します。
しかし、その後も鮫による被害者が続出したことでボーン市長も折れ、要請を受け入れます。
そして、ブロディは海洋学者のマット・フーパー(リチャード・ドレイファス)、漁師のクイント(ロバート・ショウ)と共に、サメ狩りへと出発します。
ここが見どころ
サメの恐怖を引き立てる効果的な演出
本作の演出で効果的だったのが、サメがなかなか姿を見せないということです。
本作では、本物のサメのようなリアルさを追求するため、ロボットのサメを使って撮影が行われました。
ところが、このロボットは水に濡れると故障しやすく、撮影にも支障が出るようになります。
撮影スケジュールもギリギリだったので、仕方なく、ロボットザメの出番を大幅に減らすことになります。
ここで思いついたのは、間接的にサメを暗示するものを見せるという演出でした。
本作では、水中カメラで海面下の人間の下半身を映し、何かがそこに近づいているという表現をしています。
サメに襲われた表現として、大量の血が海面に浮かんだり、千切れた脚が海中に漂ったりします。
サメの本体が見えないだけに、観客はその正体を想像するしかなく、より恐怖が掻き立てられ、緊張感が続いていくのです。
この苦肉の策が、映画史に残る傑作を生み出したとも言えるのです。
魅力的な人間ドラマ
本作の主人公のブロディ署長は、強さとはかけ離れたタイプです。
警察署長といっても絶大な権力があるわけではく、町の有力者と住民の板挟みになる、中間管理職のポジションです。
穏やかなアミティ島に引越してきたのは、犯罪の多いニューヨークの環境が嫌で逃げてきたとも言えるのです。
さらに、子供時代に溺れたというトラウマがあり、今だに泳げず、海が大の苦手です。
サメが出現しても、砂浜をウロウロするばかりで海に入ろうとしません。
それでも、サメによる犠牲者が続出するうちに、サメと戦うことを決意することになります。
サメと戦うことは、子を守る一人の父親として、自分の弱さと向き合っていくことでもあったのです。
自分の過去と戦い、人生にケリをつけるという、一人の人間の成長物語としても、魅力的な作品なのです。
まとめ
焦らしに焦らしてサメの恐怖を煽る演出、あまりにも有名な緊迫感のあるBGM、重厚な人間ドラマと、シンプルなストーリながら様々な魅力が詰まっています。
今見ても決して色あせることのない、パニック映画の金字塔といえる作品です。