「悪魔の墓場」は、1974年に公開されたイタリア・スペイン合作のホラー映画です。
日本で初めて劇場公開されたモダン・ゾンビ映画となっています。
イギリスの田舎町を舞台に、害虫駆除の超音波によって蘇った死者がもたらす恐怖を描いています。
この記事では、作品情報・見どころを語っていきます。
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作品情報
概要
ジョージ・A・ロメロのヒット作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の影響を受けて作られた作品ではありますが、日本では「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」が長年の間公開されなかったことから、本作が日本初のモダン・ゾンビ映画となっています。
「悪魔のはらわた」「悪魔のいけにえ」に続くヘラルド悪魔シリーズの第3弾ということになっていますが、日本で勝手に邦題をつけてシリーズ化したもので、それぞれの作品は特に関係はありません。
本作は、イギリスの田舎町を訪れた若者が、害虫駆除の超音波によって蘇った死者が引き起こす事件に巻き込まれていくという、SF要素も絡めたゾンビ映画になっています。
ゾンビの被害を訴えるものが異常者扱いされてしまうという、ヒッチコック的なサスペンスの要素もあります。
登場するゾンビには「頭を撃っても死なない」「噛まれても感染しない」など、本作ならではのユニークな設定も盛り込まれています。
特殊効果は「サンゲリア」で有名なジャネット・デ・ロッシであり、本作でもグロテスクなゴア描写を存分に見せてくれます。
スタッフ・キャスト
- 監督:ジョージ・グロウ
- 脚本:サンドロ・コンチネンツァ マルチェロ・コスチア
- 製作:エドモンド・アマティ
- 撮影:フランシスコ・センペレ
- 音楽:ジュリアーノ・ソルジーニ
- 特殊効果:ジャネット・デ・ロッシ
- キャスト:レイモンド・ラブロック(ジョージ)、クリスティーナ・ガルボ(エドナ)、
- アーサー・ケネディ(マコーミック警部)、アルド・マサッソ(キンゼイ)、ジョルジョ・トレスチーニ(クレイグ)
あらすじ
ロンドンの骨董屋のジョージは、バイクで休暇旅行に出かけていましたが、エドナが運転する車にぶつけられ、バイクが使えなくなってしまいます。
そこでジョージはエドナの車に同乗し目的地へと向かうことになりますが、先にエドナの姉の家に立ち寄ることになります。
その途中で道が分からなくなったため、ジョージは近くの農場に道を聞きに行ったところ、害虫駆除の超音波の実験の現場に出くわします。
ちょうどそのころ、車で待っているエドナを、赤い目をした不気味な男が襲ってきました。
見どころ
ゾンビ出現のリアルを描く
現実の社会では、殺人事件をゾンビの仕業だと疑う警察はいないでしょう。
それに、人を殺しても、「あいつはゾンビだったから」などという言い訳は通用しません。
当たり前と言えば当たり前なのですが、本作ではこの「社会の中でゾンビが出現したらどうなるか」ということを真正面からリアルに描いているのです。
ゾンビによる殺人も、身を守るためにゾンビを倒したことも、警察には信じてもらえず、主人公たちが容疑者だと思われてしまうのです。
警察がそう判断した状況証拠もきちんと描かれており、シナリオの妙をつぶさに感じることができます。
このように本作には、危険を訴える方が異常者だと思われ、だんだんと孤立していくという、ヒッチコック的なサスペンス要素もあるのです。
ユニークなゾンビ
本作に登場するゾンビも、「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の流れを汲むモダン・ゾンビですが、その特徴は、
- ゾンビになると角膜が赤くなる
- 写真に写らない
- 頭を銃で撃っても倒せない
- 噛み付かれてもゾンビにはならない
- 死体に血をつけることで仲間を増やす
- 墓石を投げ飛ばすほどの怪力を持つ
など、ロメロ・ゾンビとはまた異なるユニークなものです。
これらの特徴がストーリーにも生かされており、効果的な演出も相まって、劇中ではとても怖い存在になっています。
不安を感じる情景
本作の舞台は、イギリスの田舎町という設定になっています。
ロンドンを出発して町に入るまでは、青空が広がっていて紀行番組でも見ているかのような牧歌的な空気が流れているのですが、町に入ると一変します。
途端に曇り空が多くなり、自然の中に人間だけがポツンと佇んでいるようなカメラアングルになって、暗くて重い、孤独感・不安感を感じるような情景になるのです。
いかにも何か出てきそうな雰囲気であり、ここで絶妙なタイミングでゾンビが出現するから、より恐怖感を感じるのです。
スプラッター描写はもちろんのこと、雰囲気で怖がらせるという演出にも光るものがあります。
まとめ
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の影響を受けながらも、ゾンビのキャラクターや、サスペンス要素など、本作ならではの魅力もあります。
グロテスクな人体破壊シーンも存分に見せながら、テンポよくストーリーが展開し、伏線の回収も見事であり、ゾンビ映画の隠れた名作と言えます。