「激突!」は、1971年のアメリカのテレビ映画です。
運転中に追い抜いた大型タンクローリーから、執拗に追いかけ回されるドライバーの恐怖を描いた作品です。
シンプルなストーリーながら、スリリングな演出が冴えわたる傑作サスペンスです。
映画界の巨匠スティーブン・スピルバーグ監督の出世作としても有名な作品です。
この記事では、作品情報や見どころをネタバレ無で語っていきます。
激突! (字幕版)
作品情報
予告動画
概要
本作のストーリーはとてもシンプルです。
ごく平凡なサラリーマンが、運転中に1台の大型タンクローリーを追い抜いたことがきっかけで、そのタンクローリーから執拗に追い回され、命まで狙われるというものです。
これだけシンプルなストーリーでありながら、当時わずか25歳だったスピルバーグ監督のスリリングな演出が冴えわたり、一瞬たりとも気が抜けない傑作サスペンスとして仕上がっています。
タンクローリーの運転手の顔をあえて写さず、タンクローリーが生き物のように迫ってくる描写が恐怖感を煽ります。
アメリカではテレビ放映用に制作されながら高い品質が注目され、日本やヨーロッパでは上映時間を90分に拡大して劇場公開されました。
本作の演出技法は「ジョーズ」にも引き継がれ、スピルバーグ監督はその名を世界に轟かせることになります。
スタッフ・キャスト
監督:スティーブン・スピルバーグ
製作:ジョージ・エクスタイン
原作:リチャード・マシスン
脚本:リチャード・マシスン
撮影:ジャック・A・マータ
音楽:ビリー・ゴールデンバーグ
キャスト:デニス・ウィーバー、ティム・ハーバート、チャールズ・シール
あらすじ
平凡な中年サラリーマンのデイヴィッド・マン(デニス・ウィーバー)は、商談に向かうためハイウェイを車で走っていました。
その道中、デヴィットの車の前に、1台の大型タンクローリーが視界をふさぐように走っていました。
タンクローリーのまき散らす排気ガスを不快に思ったデイヴィットは、タンクローリーを追い抜きます。
しかし、その直後から、タンクローリーはデヴィットの車を執拗に追いかけるようになるのでした。
見どころ
怪物としてのタンクローリー
本作に出てくるタンクローリーは、米国トラック大手、ピータービルト社製の「ピータービルト281」(1960年式)です。
美術スタッフが昆虫の死骸やゴミで汚したという焦げ茶色の車体は、生命が宿っているかのような存在感を放っています。
タンクローリーの運転手は、せいぜい腕や脚元が写るくらいで、主人公が顔を見ようとしても見ることはできません。
当然、主人公を追いかけ回す理由もまったく分かりません。
この演出が、タンクローリーの不気味さを醸し出しており、ジョーズに出てくる人喰いザメのような巨大なモンスターに仕立て上げているのです。
あたかもタンクローリーそのものが迫ってくるような感覚にさせられます。
自己投影しやすい主人公
自己投影しやすい主人公も、恐怖感を高めるのに一役買っています。
主人公は、道中のガソリンスタンドで妻に電話をかけるのですが、妻から「今日は早く帰ってきて」とせがまれて、なんとか必死になだめています。
身近によくいる、仕事と家庭の両立に悩む一人の父親であることが伝わってきます。
このような人物が、怪物のようなタンクローリーに追いかけられて平穏な日常を壊されることが、より恐怖と不安を増幅させているのです。
平凡な市民がある突然理不尽な暴力に巻き込まれる、煽り運転の恐怖そのものでしょう。
ジョジョ3部の元ネタ
「ジョジョの奇妙な冒険」第3部のホイール・オブ・フォーチュン(運命の車輪)のエピソードは、煽り運転をしてくる敵と戦うストーリーにというストーリーになっています。
敵の車のドライバーは顔が見えず、車が生きているかのように演出されています。
また、主人公の承太郎たちの車の前をわざとノロノロ走り、窓から手を出して追い越しの合図を出して、対向車に衝突させようという嫌がらせをします。
さらに、道中のカフェの駐車場でドライバーのいない敵の車を発見し、カフェの客の中からドライバーを探し出すという場面も出てきます。
本作「激突!」を見ると、これらの演出・シーンの元ネタになっていることが分かってきます。
ジョジョのファンの方なら、思わずニンマリとしてしまうでしょう。
まとめ
シンプルなストーリーながら、怪物としてのタンクローリーの描写や、スピード感あふれる撮影技法、サスペンスを盛り上げる演出など、間違いのない名作です。
90分という時間に凝縮された、スピルバーグの天才性が分かる作品となっています。